「幽霊画の魅力」とその時代背景
さて、前回のブログ
夏の全生庵で「落語と幽霊画を愉しむ」では
当時の日本女性が感じていた「ストレス」と「憂鬱」について書きましたが
「怪談・真景累ヶ淵」より、前出の豊志賀さん(わからない方は、前回のブログを参照に)
自分が病気でままならない間に、若い恋人は自分を見捨てて他の女に走るかもしれない
ともう、気が気でならない…
要は、この状態のままでは「療養」できないわけです。
医者ではない私が傍から見ても、彼女の「出来物」と病気の原因は
不安とストレス、にあるような気がしていて
これはもう、少し環境を変えて気分転換をしながら、まずは「自分の心を見つめなおす」という作業が必要な気がしてしまいます。
✓なぜ、お弟子さんが離れてしまったのか?
✓今後もう一度、信頼を取り戻すためには何が必要なのか?
✓そもそも若い恋人との今後の関係をどうするのか?
環境を変えて、焦らず、ゆっくり過ごしながら
少しずつ問題点を解決して行きましょう?
そこで体調に変化が見られれば…女性ですからね
鏡の向こうの自分を見て、症状が良くなってくれば
また、気分も上向いてくるのではないかな…と、思うのですが
ここで私が気になるのは「昔の日本家屋の造り」と「介護/介助」との関係性
昔の日本家屋の特徴、と言えば
✓井戸
✓土間
✓行灯
✓厠は屋外
✓すきま風
ここで例えば、病人に介護が必要になったとしましょう。
このお話で言うと、豊志賀さんの介護を新吉がしている、というところにも
色々と問題点があるようにも感じるのですが…
✓井戸水を汲んで、飲める状態のものを常に準備する
✓土間を降りる時は誰かが介添えをする
✓長い着物の裾に、行灯の薄暗い明りなので足元に十分注意をする
✓段差のあるトイレまで昼夜問わずの介添えをする
✓春秋でも、冬はまた更にすきま風が身体に沁みるので、温かく室内を快適に保つ工夫
これが「食事の支度」以外に、毎日続く作業になるわけです。
これは大変ですよ……
しかも豊志賀さんは、今はお礼を言える状態ではありません。
いくら一生懸命に看病しても、そこに返ってくるのは「恨み言」
これには若い新吉が、堪えられるはずもなく、逃げ出す画策を立てるのですが…
いや、わかりますよ新吉さん。
介護って大変ですもの。お若いのによくやられたと思います。
ここでの彼の行動は、責められない。
しかしながらこの時代に、気の利いた介護サービスがあるわけでもありません。
そうなると、人間はどんな心境になると思いますか?
新吉の叔父さんも言っていましたね 「師匠はもう、長くは持たねぇよ」
そしてお久さんも 「あの様子では、新吉さんに見放されたらもう…」
「もう、いっそのこと早く死んでくれないかな」(こわっ
そして豊志賀自身も
そう、
という考えに、心が傾くようになるわけです。
周囲も、自分自身も
「迷惑をかけているのに、死にたくても死ねない」
自分が恨めしいわけです。
哀しいですね…
そんな状況では、治る病気も治りませんよ。
今よりもっとずっと
女性が自由に健康に生きていくのが難しかった時代
後悔も、恨みも、たくさん思い残すこともあったでしょう。
そんな時代背景で描かれている「幽霊画」なのです。
「幽霊画の持つ魅力」
体験されたい方は、是非「全生庵」へ
今年もまだ、間に合います。
全生庵
東京都台東区谷中5丁目4-7
※東京メトロ千代田線「千駄木駅」より徒歩約5分
※JR山手線・ 京成本線「日暮里駅」より徒歩約10分
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